どうも、妖狐(@yo_ko)です。
自動車部品に鋼鉄が使われるようになってから長い年月が経ちました。形状加工がしやすく十分な耐久性もあり、かつ値段が抑えられる鋼鉄は、今や無くてはならない素材と言えるでしょう。
しかし、そんな鋼鉄の時代を終わらせようとしているものがあります。それは21世紀の技術革新により生まれてきた新素材達です。
・セルロースナノファイバー
・繊維強化プラスチック
・アルミニウム合金
いずれも鋼鉄の強度(或いはそれ以上)を保持したまま、自動車を軽量化できる優れもの。今後、電気自動車の普及と共に、上位互換の素材とも言えるこれらの需要が高まっていくのは間違いないでしょう。
本記事では、大きなビジネスチャンスの一つとされている「セルロースナノファイバー」について解説していきます。
新素材セルロースナノファイバー

セルロースナノファイバーは木材などから得られる植物繊維をナノレベルで精製した新素材です。繊維素であるセルロースを10億分の1まで微細化する事で、鋼鉄を超える凄まじい強度を実現しました。
・強度が鋼鉄の5倍以上
・重量が鋼鉄の5分の1
・熱による変形がガラスの50分の1
・表面積が大きく透明性が高い
・チキソ性(液体と個体の中間のような性質)を持つ
・気体を密閉できる性質を持つ
・生成する過程で環境汚染が少ない
・資源がない国でも樹木があれば入手可能
非常に多くの利点を含んでおり、また日本のような資源の少ない国でも原料を入手できる点から、今後大きな市場規模になる事がすでに予測されています。
夢の新素材「セルロースナノファイバー」実用化が進んでいる。2030年には関連市場が1兆円に達するとの予測。鉄の5分の1の軽さで強度が5倍 https://t.co/tZvcBSkclc
— イノプレックス (@innoplex_agri) 2015年10月25日
この技術を開発したのは東京大学の磯貝明教授。そして機能性の研究として、京都大学の矢野浩之教授がセルロースナノファイバーを補強材として使った、「透明フィルム」を世界で初めて完成させました。
つまり、日本は世界に先駆けて、大きなアドバンテージを得ているという事です。
環境面ではるかに優れる
鋼鉄の応用性は、建造物・電化製品・産業機械・家具・乗り物など多義に渡ります。もはや「鉄」という資源がなければ、現代の文明はつくれなかったと言っても過言ではないでしょう。
それほどまでに私達の身近な存在になった鋼鉄ですが、実は生成する際には大きなエネルギーを使用します。
鉄の生成過程では、原料となる鉄鉱石をコークス(石炭を乾燥したもの)や石灰と一緒に燃焼する必要がある。燃焼により発生した一酸化炭素が、鉄鉱石に含まれる酸化鉄を還元する事で初めて純粋な鉄を得られるのだ。
産業革命以降、鋼鉄の製造は盛んになりました。その結果、石炭・石油・天然ガスなどの燃焼により凄まじい温室効果ガスが発生。18世紀以前と比べ、大気中に含まれる二酸化炭素濃度が約40%上昇しているというデータもあります。
過去80万年間の大気中のCO2濃度の推移を80秒間のアニメーションにまとめたもの。お忙しいなか恐縮ですが、80秒だけ手を止めてご覧ください。 https://t.co/SXuMbvwAZO
— Kenji Shiraishi (@Knjshiraishi) 2019年12月7日
この状況を変えなければ、地表の温度は今後、間違いなく2℃を超えて上昇するでしょう。そうなれば、相乗効果により温暖化はもう止められなくなるレベルまで来ているのです。
しかし、セルロースナノファイバーならそこに待ったをかける事も可能。なぜなら、この新素材は生成する際に燃焼を必要としない(温室効果ガスを発生させない)から。
鋼鉄以上の機能を踏まえながら地球環境にも優しいというまさに夢の物質。今後、すべての構造物の素材を見直される時代がやってくるかも知れませんね。
未来の自動車は木で出来ている?

近年、先進国を中心に電気自動車の普及が進んでいます。私達が住むこの日本では、国土の面積が狭い事もあり、欧米や欧州に比べて充電スタンドの設置が非常に充実してきました。
このまま充電スタンドが拡大し、電気自動車のバッテリー機能がさらに向上すれば、間違いなくガソリン車は淘汰されるはずです。同時に排気ガスによる温室効果も排除できるでしょう。
その為にはまず、電気の力で内燃機関並みの走行性を実現せなばなりません。つまり、車体の軽量化は必須だという事です。
車体の軽量化において、現在一般的に使用されるものがアルミ合金。強度は鋼鉄に劣りますが、重量が3分の1まで軽減できます。その為、高級スポーツカーなどにはよく利用されています。
非常に利便性が高く良い素材なのですが、一つだけ難点をあげるとすればコストがかかる事。加工するのが難しい素材なので値段が高くなってしまうわけです。これでは一般的な消費者には受け入れられないでしょう。
その点、鋼鉄の5倍の硬さを誇りながらも、重量が5分の1というセルロースナノファイバーはまさにうってつけの素材。車体の大部分が木製になる日も、案外近いかも知れませんね。
木製の弱点をそのまま受け継ぐ
いくら強度があるといえ、セルロースナノファイバーは植物繊維。当然、木材と似た弱点を引継ぎます。つまり、燃えやすいという事です。
人を乗せる物である電車や自動車が燃えやすいというのは話になりません。従って、自動車が木製になるのは安全性の問題を解決できてからになりそうです。
複数の構造物に利用できそうなほど利便性に富んでるが故に、今後、非常に大きな課題となるでしょう。しかし、私は必ずこの問題を乗り越えていけると確信しています。

ガソリン自動車がまだ一般的に普及していなかった頃、アメリカである発見がなされました。それはゴムに炭を混ぜると強度や安定性が増すという発見です。それ以来、自動車のタイヤは皆さんが見慣れている黒色となりました。
人類の歴史はこのような発見の繰り返しによって作られて来たのです。短所を長所に、失敗を成功に変える力が人間には備わっています。
いつか必ず耐火性を備えたセルロースナノファイバーが、世間を圧巻させる日が来るはずです。その時までに、「木で出来た車」を買うお金をぜひ貯めておいて下さいね!
【車の新素材は木 強度は鉄以上】https://t.co/8n4RGesH8a
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2019年11月18日
車のボディーが「木」でできたスーパーカーが東京モーターショーに出展され注目を集めた。木材そのままではなく、木を使った「新素材」だが、その強度は鉄の5倍以上、しかも5分の1の軽さという。
コメント